「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」について(第一回)

誰もが安心して自分らしく暮らすことができる地域共生社会の実現を目指して、『精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会』より、報告書が公表されました。

 

「地域包括ケアシステム」とは

もともと高齢者の介護という視点から出てきた考えで、2008年に国の研究会が立ち上がり、概念整理してきたものです。

戦後のベビーブーム時代に生まれた、いわゆる団塊の世代と呼ばれる人たちが75歳以上の後期高齢者となる2025年には、医療や介護のニーズがよりいっそう増大することが予想されます。

そのため、厚生労働省では、この2025年を目途に、それぞれの地域で、地域の実情に合った医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に確保される体制を構築していくことの必要性を強調し、地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築を推進しています。

このように、それぞれの地域の実情に合った医療・介護・予防・住まい・生活支援が確保される体制を構築することが、「地域包括ケアシステム」と呼ばれているものです。

 

「精神障害にも対応した」地域包括ケアシステム構築の経緯

当初は高齢者の介護という視点から始まりましたが、近年、精神疾患を有する患者の数が増加傾向にあり、平成29年には420万人となっており、傷病別の患者数をみると脳血管疾患や糖尿病を上回るなど、国民にとって身近な疾患となっています。

こうした中、平成 29 年2月には「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書において、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」を構築することが適当と提言されました。

 

システム構築に向けて

「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の理念が示されて以降、都道府県等では、障害福祉計画及び医療計画に基づく取り組みや、令和3年度からの第6期障害福祉計画においては地域平均生活日数を成果目標として定める等、システム構築の推進が図られています。

また、同システムの構築を推進するため「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業」により都道府県等の取組に対して財政的な補助を行うとともに、システム構築の推進に実践経験のあるアドバイザーによる技術的助言等が行われています。

 

一方で、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を更に推進するためには、その実施主体(責任の主体)及び精神保健医療福祉に携わる機関の役割の明確化、重層的な連携による支援体制の構築の更なる推進に関する検討が必要である等の課題が明らかとなりました。

そのため、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築推進に係る取組に資することを目的として、令和2年3月より「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」が設置され、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の基本的な考え方、重層的な連携による支援体制の構築、普及啓発の推進並びに精神保健医療福祉、住まい及びピアサポート等の同システムを構成する要素についての検討が行われ、今後の方向性や取組について取りまとめられました。

 

次回は内容を抜粋してお伝えします。

 

もっと詳しく内容を知りたい方は、下記ホームページをご参照ください。

厚生労働省 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」報告書

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000152029_00003.html

 

参考資料

・地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業報告書

・みんなの医療ガイド