「意思決定支援」について~後見事務のガイドラインより~【第2回】

2 意思決定支援の定義

意思決定支援について、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」において、以下のように定義されています。

意思決定支援とは、特定の行為に関し本人の判断能力に課題のある局面において、本人に必要な情報を提供し、本人の意思や考えを引き出すなど、後見人等を含めた本人に関わる支援者らによって行われる、本人が自らの価値観や選好に基づく意思決定をするための活動をいう。

本ガイドラインにおける意思決定支援は、本人の意思決定をプロセスとして支援するものであり、通常、そのプロセスは、本人が意思を形成することの支援(意思形成支援)と、本人が意思を表明することの支援 (意思表明支援) を中心とする (なお、形成・表明された意思をどのように実現するかという意思実現支援は、本ガイドラインにいう意思決定支援には直接には含まれないが、後見人等による身上保護の一環として実践されることが期待される。)。

本ガイドラインにおける意思決定支援は以下の通り、後見人等による「代行決定」とは明確に区別される。

① 意思決定支援が尽くされても本人による意思決定や意思確認が困難な場合

② 本人により表明された意思等が本人にとって見過ごすことのできない重大な影響を生ずる可能性が高い場合

のいずれかにおいて、最後の手段として、後見人等が法定代理権に基づき本人に代わって決定を行う (代行決定)

 

3 意思決定能力の定義

意思決定能力とは、支援を受けて自らの意思を自分で決定することのできる能力でありますが、
意思決定を行う場面では通常次の4つの要素が必要と考えられます。

 

(1) 情報の理解 意思決定に必要な情報を理解すること

(2) 記憶保持 意思決定に必要な情報を記憶として保持すること

(3) 比較検討 意思決定に必要な情報を選択肢の中で比べて考えることができること

(4) 意思の表現 自分の意思決定を口頭又は手話その他の手段を用いて表現すること

 

ここで重要なことは、意思決定能力はあるかないかという二者択一的なものではなく、支援の有無や程度によって変動するものであることから、本人に意思決定能力がないと決めつけることなく、4要素を満たすことができるように、後見人等を含めたチーム全体で支援をすることが必要です。

 

※チームの構成

親族、介護支援専門員、相談支援専門員、施設長・施設ケアマネジャー等相談支援専門職・相談員、地域包括支援センター等行政機関の担当者、主治医・看護師・臨床心理士、医療ソーシャルワーカー・精神保健福祉士などが支援メンバー候補者であるが、これらの者に限るわけではなく、本人が希望する場合には、本人が信頼する友人やボランティア、当事者団体のメンバーなどが加わることもあり得えます。