みると通信:外国人や外国にいる日本人の成年後見制度

外国人の判断能力が衰えた場合、日本で生活していく上で、成年後見制度を利用できるのでしょうか?また、日本人に永住権のある在日外国人も日本の成年後見制度を利用できるのでしょうか。
また、日本人が外国で生活している場合は、日本の成年後見制度を利用できるのでしょうか?

答えとすれば、以下の通りできる場合もありますので、詳しいことは法律の専門家にまずは相談してみてください。

このような問題は国際的な問題になりますが、具体的には日本の法律が適用されるのか、もしくは外国籍の方であれば、外国法が適用されるのかという問題があります。そして、もう一つ、日本の裁判所が判断できるのかという問題があります。どの国の法律が適用されるのかという問題については、適用される法律のことを「準拠法」といいます。日本の裁判所が判断できるのかと言う問題を「国際裁判管轄」といいます。それらについて定めている法律を「法の適用に関する通則法」(通称:通則法)といいます。後見制度の場合は、少し複雑な構成になっています。

まず、本人が外国人で日本に住んでいる場合や、本人が日本人で外国にいる場合で、後見開始の審判等がなされていない場合は、日本の法律を適用して後見開始の審判等ができます(通則法5条)。後見等の開始の原因、申立権者、審判の効力も日本法によります。したがって、市町村長にも申立権が認められることになります。
ただし、日本の法律では、申立権者として配偶者や親族が含まれていますが、配偶者や親族にあたるかどうかは、婚姻や親族についてのそれぞれの準拠法で判断することになります。例えば、婚姻の準拠法がその外国人の本国の法律による場合は、その本国の法律で配偶者となる有効な婚姻があれば、配偶者として申立権者であるということになります。例えば、同性婚でも本国で有効であれば配偶者として申立権があると思われます。
そして、後見人等の選任も通則法35条2項2号で日本の法律が準拠法になります。

ところで、通則法5条では、裁判所が後見開始の審判等ができるとも明記されているので、日本の裁判所に国際裁判管轄があります。日本で行われる裁判ですので、日本の家事事件手続法が適用されます。戸籍制度がある国は世界でも少数派ですので、戸籍謄本など外国人にはない書類については、家庭裁判所に相談してみてください。

では、外国で後見制度のような行為能力の制限に関する保護措置を受けた人が、日本で行った契約などの効力はどうなるのでしょうか。この点については、法律ではっきり決まっていません。しかし、日本の後見登記のような公示制度がありませんので、日本では保護措置の効力はなく取消などもできないと考えられています。

最後に、任意後見制度はどうでしょうか?
任意後見契約は「契約」ですので、契約に関する準拠法によるとの考えがあります。その場合、当事者が選んだ国の法律が準拠法になります(通則法7条)。日本の公証人役場で、日本の手続きに基づき、日本の任意後見契約を締結したのですから、日本の法律を選んだと考えてよさそうです。
もう一つの考え方は、任意後見制度も後見等に関する準拠法と同じにすべきというものです。その考え方によれば、本人の本国法によることになります(通則法35条1項)。本人の本国法で任意後見契約がなければ、任意後見契約を結んでも無効になってしまいます。

少々複雑な話になってしまいました。日本に住んでいる外国人、例えば永住権のある在日外国人でこれから法定後見制度を利用しようという方であれば、日本の制度を利用できると思われます。