みると通信:介護保険法改正について その1

第1回「改正・改定の背景となった現状の介護保険の課題と、日本の未来の介護のかたち」

2015年4月に、介護報酬の改定及び、介護保険法の改正が行われました。
そもそも、日本の介護保険にはどのような課題があるのでしょうか?

課題1 人口の高齢化が急速にすすみ、介護が必要な人が急激に増える!
現在、65歳以上が全体の人口の約25%、75歳以上が12%を占めています。また、75歳以上の約30%は要支援、または要介護の認定を受けています。2025年には、団塊の世代が75歳以上となり、国民の4人に1人が75歳以上になります。

課題2 介護費用が増大していて、保険としては赤字の状態!
介護保険が始まった2000年度の介護費は、3兆6000億円でしたが、2014年には10兆円に達しました。2025年には、約20兆円になると見込まれています。

課題3 介護をする人の人数が不足している!
介護職員の数は、約170万人まで増加しましたが、現状でも介護職員の不足は深刻な問題です。しかし、2025年には、1.5倍の約250万人の介護職員が必要であると言われています。

上記のように、日本の介護保険は、現状の課題とともに、介護保険の利用がピークとなると考えられる「2025年」に向けた課題を抱えています。

1950年頃までは自宅で亡くなる方が約80%でしたが、現在では、ほとんどの方が最終的に病院で亡くなっています。しかし、高齢化の急激な進行により、将来は、病院等で全ての終末期の高齢者を受け入れることは困難です。また、厚労省が行った調査によると、家族に依存せずに生活できるサービスがあれば、自宅介護を受けたいと思う人が約半数。さらに、家族とサービスを併用した介護を希望する人を含めれば、本人、家族ともに7割以上が自宅介護を希望しています。(厚労省・介護保険に関する国民の皆さまからのご意見募集より)

2025年の日本の高齢化社会を効果的に支えていくために、今後は、住まいは病院、施設から「在宅」へ、サービス提供は国から「地域」へという流れになってくると考えられます。そのためには、医療と介護の連携、在宅中重度者や認知症高齢者へのさらなる対応の強化によって、在宅生活での限界点を引き上げていく取り組みが必要になります。
そこで、今回の改正では、多様なサービスを24時間・365日を通じて利用し、病院等に依存せず住み慣れた地域での生活を継続するための「地域包括ケアシステム」を、大きく前進させることがポイントになっていると考えられます。

これは、「介護」「医療」「予防」といった専門的サービスと、その前提となる「住まい」「生活支援・福祉サービス」が相互に関係し、連携しながら在宅の生活を支えていく仕組みです。このネットワークを、日常生活圏域に築くことで、障害や病気、認知症があっても、できる限り自宅で過ごすことができる社会を目指しています。

<地域包括ケアシステム>