みると通信:Q&A その2 「成年後見人の仕事とは」

この章では、後見類型を中心に記載させて頂きます。

私の父が認知症でお金の管理ができなくなってきました。成年後見人をつけることを考えています。成年後見人が選任されると父の通帳や印鑑はどうなるのでしょうか?
後見人の仕事には、主に財産管理と身上監護があります。本人に代わって財産管理を行うため、通帳や印鑑など大事な財産を預かります。

金融機関に対しては、本人に後見人が選任されたことの届出を行い、後見人がお金の出し入れなどができるようにします。
このとき、通帳の名義も本人名義から後見人名義へと切り替わります。(ただし、金融機関によって扱いが異なる場合があります)

名義表記の例)
山田花子
成年後見人
田中太郎
(本人)
(後見人)

これは、本人の財産と後見人の財産を明確に区別するためです。

私は、認知症の母の成年後見人になろうと考えていますが、成年後見人はどのようなことをしなくてはならないのですか?
後見人は、本人の意思を尊重しながら、生活全般にわたって本人に代わり必要な行為を 行うとともに、本人の財産を適正に管理していきます。
具体的には、

  1. 本人のために医療・介護・福祉サービスなどの利用契約を結ぶこと
  2. 本人の預貯金の出し入れや不動産の管理などを行うこと

などが主な仕事となります。

また、(基本的に)1年に1度、家庭裁判所に対して報告書類を作成し提出しなければなりません。
この報告書類には、財産目録・収支予定表・金銭出納帳といった書類が挙げられます。

成年後見人となるための心構えは?
成年後見制度の目的は、「判断力の衰えた方の生活をサポートすること」です。この目的に沿った仕事をおこなうことが必要です。
「判断力が衰えた方」であっても、その程度は人によって様々です。出来る限り本人の意思を尊重し、まだ残されている能力を活用するように努めなければなりません。また、後見人には「善良な管理者としての注意義務」が課されていますから、自分の財産と本人の財産を混同することなく、後見人自身の財産を管理するよりももっと注意深く、本人の財産を管理する必要があります。
私は施設関係者です。最近、入居者の方に成年後見人が選任されたのですが、成年後見人に身元保証人をお願いできますか?
施設に入所する際に、身元保証人(身元引受人)をつけるように求められることがあり ますが、後見人は身元保証人(身元引受人)になることはできません。なぜなら、本人の財産から施設費等を支払うことはできても、その支払いができない場合に後見人が保証人となって自らの財産より支払を行ったり、本人を引き取ったりすることは後見人の仕事ではないからです。

ただ、後見人が本人の親族であって、身元保証人(身元引受人)を引き受けるのであれば問題となることはないでしょう。

成年後見人でもできないことはありますか?具体的にどのようなことができないのでしょうか?
Q4の身元保証人(身元引受人)ように、後見人であってもできないことはあります。 たとえば、婚姻や離婚、養子縁組などの行為は、本人にしか行えませんので、後見人ではすることができません。

また、本人に介護が必要な場合に、介護サービスの契約を締結すること(法律行為)は後見人の仕事ですが、本人を直接介護すること(事実行為)は後見人の仕事ではありません。(親族が後見人となっている場合に介護を行うことは問題ありません)

さらに、本人が病気になって手術が必要な場合など、病院側から医療に対する同意を求められることがありますが、法律上、本人に代わり後見人が同意をすることは許されていません。
現実には、本人が意思表示をできる状態であれば本人が承諾をしたり、親族がいる場合には親族が同意を行うなどして対応していますが、どちらもできない場合等、「後見人の医療同意」に関しては、難しい問題が残されています。

私の父は施設に入っていますが、このたび親族以外の成年後見人が選任されました。母と私は同居していますので、今まで、父の預金から母の分の生活費をもらっていました。今後はどうなりますか?
夫婦には互いに扶養義務がありますので、妻の生活費を夫が支出することは社会通念上特別なことではないでしょう。その一方で、成年後見制度では、原則として本人の財産からは、本人のために使うお金しか支出できないこととなっています。
上記のようなケースでは、ご両親のそれぞれの収入や財産の状況から、今まで通りの生活費の支払が妥当か否か検討する必要があります。
お母様の収入や財産が少ない場合には、扶養料としてお父様からお金を出してもらうことも可能かと思われます。その場合でも金額に関しては検討が必要ですから、いずれにしても後見人とよく相談してください。
私の母は5年前から入院しており、認知症も進んできているようです。母が入院前まで住んでいた自宅が空き家のままとなっていて不用心なので売ってはどうかと考えていますが売ることはできますか?
お母様のように自分で物事を判断する能力が低下した状態となった場合、自宅の売買に関して理解したり契約を結んだりすることは難しいでしょうから、後見人を選任する必要があります。

また、このケースのように、本人が住んでいた不動産を処分する場合には、後見人は、家庭裁判所の許可を受けなければならないこととなっています。
家庭裁判所の許可が必要とされている理由は、本人の生活の本拠を保護するためです。生活環境が変化することは、本人にとって大きな精神的負担となりますから、後見人の判断だけで行なわぬようブレーキをかけているのです。たとえ、現在は住んでいない家であっても、再び住む可能性がないのか等、家庭裁判所が審査をします。

成年後見人の仕事はいつまで続くのですか?途中でやめることはできますか?
後見人の任務が終了するのは、

  1. 被後見人が死亡したとき
  2. 被後見人の判断能力が回復して後見開始の審判が取り消されたとき
  3. 後見人が辞任したとき
  4. 後見人が解任されたとき

です。
通常は、1の本人が亡くなったときに終了することが多いでしょう。
後見人が辞任するには正当な事由がある場合に限られ、家庭裁判所の許可を得て初めて辞任できることになっています。
「正当な事由」の例としては、病気や高齢のほかに、後見人が遠隔地へ転居することになって後見人の仕事を円滑に行えなくなった場合などが考えられます。

成年後見人は、報酬をもらえるのですか?
後見人は、その仕事の内容に応じて、本人の財産の中から報酬を受け取ることができます。その場合、家庭裁判所に申立をしてその金額を決定してもらわなければなりません。

具体的には、後見人として働いた期間、本人の財産の額や内容、後見人の行った仕事の内容などを考慮して決定します。

なお、親族が後見人となっている場合も報酬額を決定してもらうことはできますが、一般的に第三者の後見人の場合よりも金額は低いものとなっているようです。