みると通信:知的障害、発達障害、精神障害(疾患)をもった人の働き方~ 福祉的就労編(2) ~

3、就労継続支援について

就労継続支援とは、「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき,就労の機会を提供するとともに,生産活動その他の活動の機会の提供を通じて,その知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う」事業の事を言います。利用期間の制限はなく、障害や体調に合わせて自分のペースで働くことができ、就労に関する能力の向上が期待できます。障害福祉サービスの利用契約に加えて、雇用契約を結び利用する「A型」と、雇用契約を結ばないで利用する「B型」の2種類があります。A型では労働基準法に定められた最低賃金以上の賃金が支払われますが、B型では事業所と雇用契約を結ばないため働き方に応じて「工賃」が支払われます。

就労継続支援A型

対象者

  • 通常の事務所に雇用される事が困難であって、適切な支援により雇用契約に基づく就労が可能な障害者

※ 65歳に達する前5年間障害福祉サービスの支給決定を受けていた者で、65歳に達する前日において就労継続支援A型の支給決定を受けていた者は当該サービスについて引き続き利用する事が可能。

 

サービス内容

  • 通所により、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者について、一般就労への移行に向けて支援
  • 一定の範囲内で障害者以外の雇用が可能
  • 多様な事業形態により、多くの就労機会を確保できるよう、障害者の利用定員10人からの事業実施が可能
  • 利用期間の制限なし

主な人員配置

  • サービス管理責任者
  • 職業指導員:生活支援員
    10:1以上

就労継続支援B型

対象者

  • 就労移行支援事業などを利用したが一般企業の雇用に結びつかない者や、一定年齢に達している者などであって、就労の機会等を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される障害者
    1. 企業等や就労継続支援事業(A型)での就労経験がある者であって、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった者
    2. 50歳に達している者または障害基礎年金1級受給者
    3. 1及び2に該当しない者であって、就労移行支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者

サービス内容

  • 通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない)するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者は、一般就労への移行に向けて支援
  • 平均工賃が工賃控除程度の水準(月額3,000円程度)を上回ることを事業者指定の要件とする
  • 事業者は、平均工賃の目標水準を設定し、実績と併せて都道府県知事へ報告、公表
  • 利用期間の制限なし

主な人員配置

  • サービス管理責任者
  • 職業指導員:生活支援員
    10:1以上

 

平成28年度平均工賃 (賃金)
施設種別 平均工賃(賃金) 施設数
(箇所)
平成27年度(参考)
月額 時間額 月額 時間額
就労継続支援
B型事業所
(対前年比)
15,295円
(101.7%)
199円
(103.1%)
10,434 15,033円 193円
就労継続支援
A型事業所
(対前年比)
70,720円
(104.3%)
795円
(103.4%)
3,385 67,795円 769円

 

4、就労移行支援について

就労移行支援は、「一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練」を行います。利用者に合う職場や働き方を見つけるために、自己分析や企業研究などとともに、面接や履歴書の書き方の練習といった就職活動のサポートを行います。ただし、就労移行支援事業所が直接、職業紹介を行うことはできませんので、そうした場合はハローワーク等を利用することになります。

≫みると通信参照
知的障害、発達障害、精神障害(疾患)をもった人の働き方~一般(企業)就労編~ ②

就職した障害者の就労継続を図るため、企業、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整を行うとともに、雇用に伴い生じる日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導及び助言等の必要な支援を行う「就労定着支援事業」と一体的にサービスを提供する事業所が多くなっています。

就労移行支援

対象者

  • 一般就労等を希望し、知識•能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適正に合った職場への就労等が見込まれる障害者

※ 休職者については、所定の要件を満たす場合に利用が可能であり、復職した場合に一般就労への移行者となる

※ 65歳に達する前5年間障害福祉サービスの支給決定を受けていた者で、65歳に達する前日において就労移行支援の支給決定を受けていた者は当該サービスについて引き続き利用することが可能

サービス内容

  • 一般就労等への移行に向けて、事業所内での作業等を通じた就労に必要な訓練、適正に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援等を実施
  • 通所によるサービスを原則としつつ、個別支援計画の進捗状況に応じ、職場実習等によるサービスを組み合わせた支援を実施
  • 利用者ごとに、標準期間(24ヶ月)内で利用期間を設定
    ※市町村審査会の個別審査を経て、必要性が認められた場合に限り、最大1年間の更新可能

主な人員配置

  • サービス管理責任者
  • 職業指導員:生活支援員
    6:1以上
  • 就労支援員
    15:1以上

 


一般就労後

就労定着支援

対象者

  • 就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自律訓練の利用を経て一般就労へ移行した障害者で、就労に伴う環境変化により生活面・就業面の課題が生じている者であって、一般就労後6月を経過した者

サービス内容

  • 障害者との相談を通じて日常生活面及び社会生活面の課題を把握するとともに、企業や関係機関等との連絡調整やそれに伴う課題解決に向けて必要となる支援を実施
  • 利用者の自宅•企業等を訪問することにより、月1回以上は障害者との対面支援
  • 月1回以上は企業訪問を行うよう努める
  • 利用期間は3年間(経過後は必要に応じて障害者就業•生活支援センターへ引き継ぐ)

主な人員配置

  • サービス管理責任者 60:1
  • 就労定着支援員   40:1  (常勤換算)

5、最後に

2017年に、全国の就労継続支援事業所の閉鎖が相次ぎ、そこで働く多くの障害者が解雇されるという事がありました。障害福祉サービス事業所には、職員の人件費や事業の運営経費をまかなうため、国や自治体から給付費が支給されます。障害者に就労の機会を提供し、社会的自立を支援する役割を担うはずの障害福祉サービス事業所ですが、中には、自治体からの給付費や助成金のみが目当ての事業所も存在します。本人の給与や工賃は、事業所内外で仕事して得た事業収入でまかなうべきです。そのため、給付費で障害者の給与や家賃を支払ってはならないという規制があります。ところが、本人は作業や仕事をすることなく給付費の中から給与を補てんしている事業所も存在します。そのようにして安易に利用者を囲い込んでいる事業所が、行政からの監査により規制を守っていないと指導を受けたのです。結果、給与や工賃を払えるだけの仕事を作り出すことが困難となり閉鎖した事業所が相次いだのです。

福祉的就労の原点は共同作業所といわれています。共同作業所は「本人を住み慣れた地域で暮らし続けてもらいたい」という思いをもったご家族がボランティアで始めた活動です。特別支援学校卒業後の知的障害者の地域における居場所や働く場として、心を病んだ後引きこもっている精神障害者の仲間づくりや働く場として、つくられたのです。事業所の運営に携わる方々は、もう一度本人やご家族の想いに耳を傾けるべきでしょう。