みると通信:認知症を知ろう ~その他の認知症~

その他の認知症(アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症以外)として代表的なものに「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症(ピック病)」があります。認知症というと「物忘れ」がひどくなるという印象をもっている方が多いと思いますが、今回の2つの認知症の初期の主症状は、「物忘れ以外」であるところが特徴と言えます。

レビー小体型認知症

「レビー小体型認知症」は、アルツハイマー型認知症と同様、原因不明ですが、大脳皮質にレビー小体という構造物が広くみられることがわかっています。早期に「幻視(見えるはずがないものが見える)」が出現するなどアルツハイマー型認知症とは違った特徴がありますが、レビー小体型認知症自体が十分に知られていないこともあり、臨床の場ではアルツハイマー型認知症として診断されていることも未だ多くある様です。それでも、認知症の参考書などによっては、「脳血管性認知症の割合よりも多い」と記載されていることもあり、少しずつ認識が高まってきている認知症と言えます。

レビー小体型認知症の症状

記憶力・判断力の低下、見当識障害は当然見られますが、一番の特徴としては「幻視」です。「子どもが布団に入りこんでくる」「知らない人が部屋の隅に立っている」「壁に虫がいる」などリアルに表現をされます。それに伴い恐怖を感じ、異常に見える行動をとることもあります。また、このような幻視や異常行動、その他の認知症状が「変動しやすい」のも特徴です。穏やかな状態から無気力状態へ、また興奮状態へと変動します。特に夜や睡眠時に落ち着かない状況になることが多い様です。もう1つの特徴として「パーキンソン症状(手足の振え・筋肉の緊張や固縮・動作の緩慢さ・バランスがとれないなどの症状)」が出ることも挙げられています。そのため、転倒などにより寝たきり状態につながることも多いです。これらの「症状が変動しやすいこと」「パーキンソン症状」のため、家族の介護負担が一層かかることになります。

レビー小体型認知症の治療方法

2014年9月、アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」がレビー小体型認知症に対する効能・効果が認められました。それにより、症状の緩和、進行を遅らせる可能性のある薬として利用できるようになりました。また、その他にも幻覚、不眠等の精神症状やパーキンソン様の症状を緩和する薬が利用されています。しかし、レビー小体型認知症は薬に過敏に反応しやすいため、内服時は周囲が本人の様子をよく観察し、主治医としっかり相談しながら調整していくことが大切だと思われます。

アルツハイマー型認知症やパーキンソン病(またはパーキンソン症候群)、老年期精神病と診断されながら上記の症状が顕著な場合や精神症状が悪化する場合などは、もう一度医師に相談されたり、他の病院で意見をいただいたりすることも必要かもしれません。また、デイケアなどの医療福祉サービスを利用して、身体機能の維持や幻視等に対する不安の解消、介護者の負担軽減を図っていくことも大切となります。

前頭側頭型認知症(ピック病)

以前は、ピック病(脳内にピック球という異常細胞を伴い、前頭葉と側頭葉が委縮する病気。原因不明。)として一般化されていましたが、臨床・病理研究の中でピック球を伴わない前頭側頭葉変性症が存在することが分かってきました。そこで、前頭葉と側頭葉の委縮する特徴だけに限定し、認知症の1つとして「前頭側頭型認知症」と分類することになりました。

前頭側頭型認知症の症状

アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症は初期症状として「記憶力低下」があるのに対して、前頭側頭型認知症では、「人柄や性格の変化」が顕著となってきます。初期の段階では、記憶障害や見当識障害は見られないことが多いです。アルツハイマー型認知症の主症状としても、「人柄や性格の変化」が見られますが、障害性としては前頭側頭型認知症の方が初期の段階から強く出てきます。その後、進行とともに、粗暴・短絡的な言動、異食・過食、徘徊、無欲・無関心などの症状が強くなります。相手の話は聞かず一方的にしゃべる行動や不真面目さやひねくれた態度に見えるような行動をとります。また、同じ言葉や行動を繰り返すことも特徴です。さらには、店にあるものを何気に食べたり盗ったり、交通ルール違反をするなど一般的に言われる非社会的行動をとる場合もあります。その結果、これまで真面目に職を全うしていた人が急に仕事を辞めることになったり、刑を受けることとなったりする事例もある様です。当然ですが、これらの行動に関して本人は病識を持っていません。この認知症は、多くが40~60代と比較的若い世代が発症することが多いのも特徴の一つです。初期に、記憶障害や、見当識障害が見られず、また、年齢が若いために、認知症の可能性に気付かれず、反社会的行動に焦点があてられ、社会的信用を失ったり、精神疾患と診断されてしまう場合もあるため、識別診断が重要になってきます。これらの症状やそれに伴う結果が、本人・家族のこれからの生活に影響する大きな課題となっています。

前頭側頭型認知症の治療方法

治療方法としては確立されていません。見守りを含めた介護を中心に多動性・衝動性などについて対症療法的に薬を服用していくことが実情の様です。介護者である家族の負担も大きくなりますが、施設等への入所についても現状としてお断りされるケースが多いと思われます。(※すべて断られる訳ではありません。こういう現状を認識しながらも医療機関・相談機関へ相談することが大切です。みると通信<歳のせいによる「もの忘れ」?それとも認知症による「もの忘れ」?>に記載している相談機関を参考にしてください。)

症状の特徴から本人・周囲ともに負担のかかる認知症ですが、まずは周囲が「人柄や性格の変化」に気付き、早期の段階で専門医へ相談に行くことが大切でしょう。

また、2016年6月に若年性認知症支援コーディネーターを設置した若年性認知症相談窓口が設置されました。

www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/jyakunensei.html