みると通信:ギャンブル依存症について知ろう その1

~依存症(嗜癖)とは~

はじめに

上場企業の経営者が、個人的なカジノの賭け金のために子会社から100億円を超える多額の資金を引き出して、会社に損害を与え逮捕された事件が注目されました。また、元力士が、現役時代にギャンブルによって総額5億円近くの借金を抱えて、肩代わりしてもらっていたこと。引退後も経営していたお店の売上金をギャンブルに使い、社員の給料を支払えなかったことなどを告白して話題になりました。いずれの場合も、ギャンブル依存症の影響を指摘されています。

平成24年8月に厚労省の補助を受けて飲酒やギャンブル、インターネットなどへの依存の度合いを実態調査した研究班が研究結果を発表しました。調査の結果、ギャンブル依存症の疑いがある人は成人男性の8・8%、女性の1・8%で、全体では4・8%にのぼり、男性438万人、女性98万人で、計536万人がギャンブル依存症を疑われるという結果となりました。この数字は、世界のギャンブル依存症の平均発症率の倍以上と言われています。

依存症(嗜癖)とは

アディクションという言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、日本語では嗜癖と呼ばれています。「止めよう辞めようと思いながらも、止めること辞めることのできない、悪い習慣に耽ってしまうこと」です。対象が物質である「物質アディクション」、対象が行動やその過程である「行動・過程アディクション」、対象が人間関係である「関係アディクション」の3つに区別されます。そのうち「物質アディクション」と「行動・過程アディクション」は医学用語で依存症と呼びます。

「物質アディクション」とは、アルコール、薬物、などへの不健康なのめり込みで、アルコール依存症、薬物依存などです。

「行動・過程アディクション」は、ギャンブル、買い物、セックスなどの行動や過程へのとらわれで、ギャンブル依存、買い物依存、セックス依存などです。

アディクション(嗜癖)には、以下のとおり、共通して認められる行動や症状があります。

  • 慢性進行性の行動障害(適切な範囲をはるかに超えている)
  • 身近な家族や他者を巻き込む
  • 気分を劇的に変化させる作用がある
  • 背景に空虚さがある
  • 問題の否認がある
  • 再発が多い
物質アディクション
(特定の物質の摂取に関する嗜癖)
行動・過程アディクション
(特定の行動過程に執着する嗜癖)

アルコール
薬物(覚せい剤、有機溶剤、大麻、睡眠薬など)
ニコチン(タバコ)
カフェイン(コーヒー、コーラ、栄養ドリンク、緑茶、紅茶、など)

ギャンブル
買い物
セックス
摂食障害(過食、拒食)
窃盗、放火
日常的暴力、自傷
インターネット、ゲーム

※アルコール依存については、コラム「アルコール依存症について知ろう」をご参照ください。

【参考文献】
「知っていますか?ギャンブル依存 一問一答」
著者:西川京子
発行:株式会社 解放出版社