みると通信:介護保険法改正について その3

第3回「今回の介護報酬改訂、介護保険法改正で、

「介護サービスの値段」は上がった?下がった?」

介護報酬は、全体で9年ぶりの引き下げ改訂となり、全般的に基本報酬は引き下げられ、在宅の中重度者や認知症高齢者の対応に重点的に取り組むことが加算報酬として評価されています。また、事業者の収入減少によって、介護職員の給料が下がることがないように、介護職員処遇改善加算はアップしました。

●要介護3で認知症・中重度者ケア加算(※)のデイサービスを利用した場合
(※それぞれの加算には、職員の人員配置、利用者の状況等による算定要件あり。)

<1日分>

改正前 改正後
基本料 9,440円 基本料 8,980円
機能訓練 420円 機能訓練 460円
サービス提供体制強化加算 120円 サービス提供体制強化加算 180円
介護職員処遇改善加算 190円 介護職員処遇改善加算 430円
認知症加算 600円
中重度者ケア体制加算 450円
合計 10,170円 合計 11,100円

(1割 1,017円) (1割 1,110円)
1回の利用で930円(1割負担93円)の差

(※1単位10円で計算しています。地域により詳細は異なります。また、介護保険の負担割合は1割で計算しています。)

介護保険施設(特別養護老人ホーム・老人保健施設・介護療養型医療施設)は、基本となる施設サービス費が引き下げになりました
特別養護老人ホームでは、施設サービス費は引き下げられましたが、多床室の光熱水費相当額の負担、居室料金の見直しが行われました。

例えば要介護3の方が、特別養護老人ホームに1カ月入所した場合

<課税世帯の場合>

改正前 改正後
施設サービス料 25,800円 施設サービス料 23,430円
食費 41,400円
(1日1,380円)
食費 41,400円
(1日1,380円)
居住費 9,600円
(1日320円)
居住費 25,200円
(1日840円)
合計 76,800円 合計 90,030円
(介護保険料 1割負担の場合)

(※施設の体制・地域によって、施設サービス料金は異なる場合があります。また、非課税世帯で食費・居室料の補足給付支給対象の方の場合は上記料金とは異なります。)

また、介護老人保健施設も施設サービス費は引き下げとなり、在宅復帰・在宅療養支援の機能を強化することが、加算によって評価される傾向が強化されました。
つまり、基本料金は下がりましたが、利用するサービス・施設や本人の資産状況によっては料金が上がる可能性があるということです。

介護保険は、保険という性質上、細かく定められており、一般的には非常に分かりにくいという性質をもっています。また、この保険を利用する本人が高齢であることを考慮すると、サービスを適切に選ぶことは大変です。
特に、認知症高齢者の場合は、本人でなく、家族や第3者が決定権を持っている場合があります。本人、家族、サービス提供事業者の利益が一致しているとは限らず、介護保険は「本人保険」であるにも関わらず、真から本人のために利用されているとは思えないようなケースも見受けられます。自分にあったサービスはどれか、サービスの過剰提供や不足はないか、サービスの質はどうなのかは、本来であれば利用者本人が選び、評価するべきものです。認知症があっても利用者自身が、自分のために選び、そして必要なサービスを受けることができるよう支援するために、成年後見制度は介護保険制度と同時にスタートしました。
親しい人が認知症等で正しい判断をすることが難しくなった時、あるいは、将来自分が認知症になったら・・・と考えた時には、成年後見制度や任意後見制度を思い出して欲しいと思います。

※北九州成年後見センター「みると」では、今後も介護保険制度の改正や変化がある場合には、その都度、新しい情報をお伝えしていく予定です。