みると通信:不動産にまつわる後見人の仕事~第1回「不動産を売りたい」

後見人の仕事では、ご本人が不動産を所有していれば、その管理を行います。状況によっては売却などの処分を行うこともしばしばあります。案件によっては、不動産を多数所有していることが見受けられ、“不動産の管理に手間がかかって大変!”という後見人のかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
また、そもそも後見人を選任することになった理由として、不動産に関する手続きを行うために後見人が必要で、申立てを行ったケースが少なくありません。

そこで今回は、後見人が不動産に関する手続きにどのように関与するのか、4つの例を参考に見ていきましょう。

第1回 不動産を売りたい!

 

このように、施設に入所するなどして空き家になった場合に、親族が不動産を管理することが難しい、施設の利用料を捻出するために家を売りたい、といったような理由で本人の親族が不動産を売却しようとするケースが増えています。

実際には、まずは親族が不動産屋などの業者に家を売りたい旨の相談をし、買い手を探してもらうことが多いですが、このとき、本人が認知症などで明確な意思表示や判断をできない場合、売買契約を結んだり、手続きをすることができません。そこで、本人に対して後見人を選任し、後見人が本人に代わって売却の手続きを行う運びとなります。

しかし、注意が必要なのは、後見人はあくまでも本人を守るために選ばれた人ですので、後見人が、不動産を売却することは本人の利益にはならないと判断すれば、親族の希望どおりに売却することはできなくなります。

さらに、今回のケースのように、本人が暮らしていた家を売却する場合には、「居住用不動産の処分」という行為に該当し、本人の生活の本拠となっていた重要な不動産を失うことになるため、家庭裁判所から許可をもらわなければなりません。家庭裁判所では、本当に本人の不動産を売る必要性があるのか、また売買価格は妥当な金額なのか等、さまざまな要素を審査します。

 

後見人は、本人の大切な財産を守るため、何が本人にとって最善の利益であるのかを常に念頭に置き、判断を行うことが必要です。