みると通信:統合失調症について知ろう 【第3回 後半】

―統合失調症を患った方が利用できる保健・医療・福祉サービスって何があるの?―

4.所得保障について

~障害年金~

病気やケガなどで一定以上の障害の状態となり、日常生活や仕事上でたくさんの困難をきたす場合、一定の受給要件((1)加入要件、(2)納付要件、(3)障害状態要件の三つ)を満たすことで年金が支給されます。もちろん精神障害の方(統合失調症含む)も対象です。障害基礎年金の場合、例えば1級で年額約99万円、2級で年額約79万円が支給されます。相談窓口は区役所の国保年金課になります。また、障害厚生年金の場合も、障害基礎年金と同様、一定の受給要件を満たせば障害の程度に応じて、1級~3級の年金を受け取ることができます。詳しくはお近くの年金事務所にご相談ください。

~生活保護制度~

「統合失調症で入院し、仕事も失い貯金もなく、たよれる親族もいなく入院費や生活費の工面ができない。」「障害基礎年金2級と就労継続支援事業所の工賃収入だけでは生活が苦しい。」このような場合の所得・生活保障に生活保護制度があります。世帯の収入が国の定める最低生活費の基準額を下回れば生活保護を受けることができます。統合失調症などの病気や精神障害のため働きたくても働けずに、十分な収入が得られずに生活保護を受給して生活されているかたは多くいらっしゃいます。

生活保護の相談窓口は区役所生活保護課です。

5.障害者雇用施策

障害者の雇用を促進することを目的として、国はさまざまな援助制度を設けています。障害者の雇用の促進等に関する法律により、民間企業の事業主は1.8%以上(法定雇用率)の障害者を雇用するように義務づけられています。

ハローワークでは、職業相談や職業訓練、また職業紹介やトライアル雇用(3ヶ月間の試行雇用)を行っており、また、障害者就業・生活支援センター(北九州地区の場合、北九州障害者しごとサポートセンター)では、窓口での相談や職場訪問等により、生活と就業の両面にわたるトータル的な相談支援を行っています。

一方、病状や体力面などの問題から、一般の就労を続けることが困難な方たちに対しては、福祉的な就労や生産活動の機会を提供するなど、一般就労に向けた知識や能力を身につけるための支援制度もあります。

6.その他

~成年後見制度~

私たち専門職が日頃から係わっている制度です。制度の詳細ついては、既知のことと思いますので詳細は省きます。なお、北九州市にも、障害者自立支援法の地域生活支援事業の一環として「成年後見制度利用支援事業」というものがあります。これは、身寄りがなく自らの申し立てが困難な場合、市長が本人に代わり申し立てを行い、申し立て費用は市長の負担になります。尚、生活保護もしくはこれに準ずると認められる方については、成年後見人等への報酬の助成があります。

~日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)~

日常生活に不安のある高齢者や障害者が、少しでも住みなれた地域で自立した生活を安心して送っていただけるようお手伝いするサービスです。具体的には、(1)福祉サービスについての情報提供や手続きなどの利用援助、(2)年金などの受け取りに必要な手続き、また公共料金や家賃の支払い手続きなどの日常的な金銭管理、(3)預金通帳、年金証書、印鑑等の預かりサービス等があります。

北九州市社会福祉協議会 権利擁護・市民後見センター「らいと」にご相談ください。

~居住サポート事業~

「精神科病院に10以上長期に入院している。主治医もいつ退院してもいいと言っているが、保証人がみつからず住むところがみつからない。」といった悩みをもった精神障害者を持つ方々への支援を行ってくれる事業です。障害者自立支援法の施行に伴い、市町村支援事業のひとつとして、平成18年10月1日に開設された新規事業で、「北九州障害者居住サポートセンター」という所が行っています。施設や病院からの地域移行や地域での住み替えを希望する障害のある方々の「住まい」の問題を入口とした民間相談支援機関です。入居前後の支援に留まらず、入居後の緊急時の対応も併せ、暮らしを支えていく地域の社会資源とのネットワーク作りや関係機関によるサポート体制の調整なども行っています。

~精神障害者地域移行支援事業~

「料理もできないし、役所の手続きとなどもしたことがない。退院しても一人で暮らしゆけるか不安・・・」などなど、これまで様々な理由によって精神科病院を退院できなかった人に対して、関係機関が協力して、退院後の地域生活における生活を支える体制を作り、退院を実現していこうとする事業です。主治医先生の推薦があればこの事業が利用でき、自立支援員と呼ばれる相談員が病院を訪問して相談に乗ってくれます。北九州市では浅野社会復帰センターという施設で相談を受けてくれます。

以上、代表的なサービスや事業を簡潔にご紹介いたしました。統合失調症を患った方たちは、「集中力や持続力の低下」「人付き合いが下手になる」「生活リズムがおかしくなる」などからくる生活のしづらさから、仕事ができなくなったり、日常生活を送ることが困難になります。そのため、経済的負担を軽減したり、収入の基盤を確保するための制度、また自立した社会生活を支えるための各種サービスが存在しています。生活のしづらさとは、各個人の置かれた環境によって度合いは異なり変化もします。その方を取り巻く環境を整備する上で、サービスの利用は欠かせないものになるのです。

<参考文献ほか>