みると通信:統合失調症について知ろう 【第2回】

-統合失調症の治療とは-

前回は統合失調症について、誰でも患う可能性があること、原因は完全に解明されていないこと、また、具体的な症状や障がいについてお話しました。第2回目は、その「治療法」についてお届けしたいと思います。

現在の統合失調症は、ずいぶん昔からその存在が知られていたようですが、疾患としての概念は、近代に入ってから具体的に研究されるようになりました。研究に沿って様々な治療法が考案されてきましたが決定的なものは皆無でした。そのような中、1952年にクロルプロマジンという治療効果の高い薬物が発見されたことが、統合失調症の治療に画期的な変化をもたらしました。現在の統合失調症の治療は、この向精神薬を用いた(1)「薬物療法」を中心に(2)「精神療法」(3)「リハビリテーション」が代表的な治療と言われています。これらはそれぞれ独立したものではなく、発病から回復に至るすべての経過において互いに相互補完的に関係しています。

(1)薬物療法

 向精神薬とは脳に作用して精神機能に作用する薬物の総称です。統合失調症は、脳内のドーパミンの働きが過剰になり、幻覚や妄想などが起こると考えられています。覚醒レベルが上がりすぎている状態です。向精神薬の主な役割は、このドーパミンの働きを抑えることにあります。特に急性期の治療には薬物治療が第一です。薬は経口服薬が主ですが、急速に鎮静を図るときは注射の方法も用いられます。薬が効くと「眠れるようになる」「ピリピリした感じがやわらいできた」「ボーッとできるようになる」などの感じがでてきます。症状の改善に合わせて薬は徐々に減らしていきますが、一般的に高血圧や糖尿病の治療と同じように服薬は長期にわたって継続する必要があると言われています。

(2)精神療法

精神療法とは、精神科医や臨床心理士(CP:clinical psychologist)などによって行われる主に対話による治療法です。言葉などを媒介として治療者と患者さんの人間関係を用い心理的な問題の洞察・分析をすすめ、解決を図ります。患者さんが自分の内面を語り、治療者がそれを受容し支持していくことで、心の問題が徐々に軽減されていくように働きかける治療法といえます。治療者と患者さんの1対1で行われる個人精神療法の他にグループで行う集団精神療法も用いられます。

(3)主なリハビリテーション

1.作業療法
職業的な作業や趣味的・創造的な作業を通して生活技術を高めます。作業種目として、手工芸、木工、革細工、調理、園芸などがあります。体力や作業能力の回復、コミュニケーションの機会・対人関係の練習、リラックス・ストレス発散などを目的に、作業療法士(OT:Occupational Therapist))が中心となって行われます。

2.レクリェーション療法
 スポーツやゲーム、行事などの娯楽活動を通して行われる治療法のひとつです。レクリェーションを通して集団行動を楽しみながら体験することで、喜びや楽しみ、充実感、達成感、連帯感などを再体験します。長期入院生活からくるホスピタリズムを予防する目的もあります。

3.社会生活技能訓練(SST:Social Skills Training)
1970年代アメリカのリバーマン教授らによって開発された認知行動療法のひとつです。社会適応能力の向上を目指し対人的生活技能を改善するというトレーニングです。自分の考えや気持ち、要求などを相手に上手く伝えるための技能や、実生活で困っていることの模擬場面を作っての練習(ロールプレイ)などを通してコミュニケーション技能を主とした生活行動の改善を行います。

4.心理教育
治療に前向きに取り組んで行くための教育的支援です。病気についての正確な知識を理解したり、話し合うことで、症状に対する適切な対処や服薬管理などを身につけ、セルフケア能力を高め、安心感を持って生活できるよう援助します。患者さん個人やグループのほか、家族にも用いられます。

これらの他にも、治療の場としてのデイケアやデイナイトケア、精神科訪問看護なども重要なリハビリテーションの一方法と言えるでしょう。病院によっては、行動療法や音楽療法、絵画などの芸術療法などを治療に取り入れているところもありますが、すべての精神科病院で実施されている訳ではありません。そういう意味では、各病院のホームページや医療相談室等の精神保健福祉士(PSW:Psychiatric Social Woker)、保健所の保健師などを活用し、自身にあった病院を選ぶことも大きなポイントと言えるでしょう。