みると通信:認知症を知ろう ~脳血管性認知症とは~

認知症を知ろう ~脳血管性認知症とは~

前回は、アルツハイマー型認知症についてお話しました。今回は、脳血管性認知症について説明します。

脳血管性認知症とは

脳の血管が詰まったり、破れたりすることで脳に壊死部分が生じ、認知症症状を呈するものを「脳血管性認知症」といいます。アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症です。原因は、当然ですが、脳血管障害(脳梗塞や脳出血)であると言えます。脳血管性認知症の場合、突然の脳血管障害をきっかけに急激に認知症が発症する場合と、小さな脳梗塞を繰り返して起こしている(多発性ラクナ梗塞)うちに徐々に認知障害が現れる場合とがあります。割合としては、後者の方が多い様です。では、脳梗塞や脳出血を起こす基礎疾患とは何でしょう。そうです。糖尿病や高脂血症、高血圧などのいわゆる「生活習慣病」です。つまり、生活習慣病の予防が認知症の予防につながることになります。

脳血管性認知症の症状

症状については、前回の通信で説明した認知症の一般的症状と大きな違いはありません。ただ、脳の血管のどこの部位が障害されたかによって症状の出方が異なります(海馬の病変だと重い記憶障害になるなど)。時間や場所は分かるけれど記憶力の低下が顕著、意欲は保たれているけれど判断することが難しいなど、できることとできないことがバラバラに現れる、いわゆる「まだら認知症」が特長です。アルツハイマー型認知症と比較しながら症状を見てみると、アルツハイマー型では「時間の経過とともに徐々に進行していく」「その人の以前の面影がなくなる」「行動面で落ち着きの無さが見られる」といった症状があるのに対して、脳血管性認知症では「脳血管障害の発作が起きるごとに症状が段階的に悪化していく」「人柄、性格がある程度保たれる」「精神面での不安定さ(感情の揺れ、泣いたり怒ったり)が目立つ」などの特徴が見られます。

脳血管性認知症の検査

アルツハイマー型認知症の検査と同様に、頭部CTやMRIを実施することが主流です。これらの検査で脳内の血管障害の有無、大きさ、損なわれた部位を調べます。また、脳梗塞にはなっていなくても脳血管の狭窄や閉塞により脳への血流が低下していることが原因で認知症を起こしている場合もあるため、脳の血管を調べる「脳血管造影」や脳の血流を調べる「SPECT」と呼ばれる検査が有効な場合もあります。さらに、エコー検査によって、首の頸動脈の動脈硬化の程度を調べることもある様です。

脳血管性認知症の治療方法

現在、脳血管性認知症そのものを治療する方法はありません。現状としては、脳血管障害の再発予防と認知症の症状への対症療法が治療の中心となります。症状のところで説明しているように、「脳血管性認知症は脳血管障害の発作が起きるごとに症状が悪化する」という点を考えると再発予防をすることが合理的かつ有効であることがわかります。服薬治療としては、血流の改善を目的とした薬や脳の働きを良くしたり、神経伝達物質の調整をしたりする薬を使用します。その他、リハビリテーション(参考:アルツハイマー認知症の治療)が認知症の症状のみならず、生活の質の改善に役立つと言われています。

やはり、バランスのとれた食生活や適度の運動、肥満予防、飲酒や喫煙の抑制、精神的ストレスの緩和など健康づくりに意識した生活が大切ですね。次回は、その他の認知症について説明します。